慢性炎症に潜む危険性

慢性炎症とは、内臓などで炎症が起き、緩やかに且つ長期間にわたってくすぶり続ける状態を言います。

 一般的な炎症に見られる発熱や腫れ、痛み等の症状が現れず、なんか調子が悪いままそれが日常となり、発覚が遅れて気付いた時には病態が進行しているという状態になります。

こうしたことから慢性炎症は、“サイレントキラー”とも呼ばれています。

 最近の研究では、これまで慢性炎症との関連についてはほとんど顧みられなかった病気でも、実は慢性炎症が関わっていることがわかってきました。

加齢とともに増加するがん、動脈硬化、肥満、アルツハイマー病などの種々の疾患、さらには老化そのものも、慢性的な炎症性の変化によって症状が進行するのではないかと考えられる証拠が見つかっています。

最初の内は症状として現れない慢性的な炎症性の変化が、種々の病気の要因となっている可能性があるということです。

 パプアニューギニアで旧石器時代さながらの生活を送る民族がいます。彼ら約200人の血液を検査したところ、糖尿病の発症率はほぼ0%(日本人は15%)、また認知症やがんはほとんど見られなかったそうです。つまり、現代社会で理想とされる健康体を維持していたのです。

一方、私たち現代人はというと「なんか調子悪い」状態。では何が「慢性炎症」の原因になるのでしょうか。

先ほどの民族がどんな生活を送っているのか想像しながら、旧石器時代人の生活と現代人の生活を比較してみましょう。

1:多すぎるもの  → 摂取カロリー、精製品、塩分など

2:少なすぎるもの → 睡眠、空腹感、食物繊維など

3:新しすぎるもの → 加工食品、人工照明、インターネット(デジタル機器)など

ここ数十年で環境が大きく変わりすぎているにもかかわらず、人体の仕組みは数万年間ほとんど変わっていないと考えられています。つまり人体がこれらの環境変化に対応できていないことが慢性炎症の原因になっているかもしれないのです。

 余分な内臓脂肪からは炎症物質が分泌され、その炎症物質が血液を通して全身に回り、体内のどこかに落ち着くことが繰り返されるとそれが慢性炎症の原因となっていきます。

 PCモニターやスマホ画面等の人工照明は、そこから出ている光(特に夜間)が人間に備わっている体内時計を狂わせて睡眠リズムを乱し、炎症からの回復手段である睡眠を妨げます。ただでさえ不足しがちな睡眠時間なのに熟睡している時間はさらに短くなってしまいます。ある研究では、毎晩6時間以下の睡眠で1週間を過ごした場合、 炎症や免疫系、ストレス反応に関連する711個の遺伝子の発現に影響が出た、との報告がなされています。

「調子良い」生活を手に入れるには、7時間以上の睡眠を確保すること、摂取カロリーを今より減らし適正量を食べること、できる限り体を動かし体に余分な脂肪がつくことを防ぐことにより「慢性炎症」を避けることが大切と考えます。結局は人間として自然な状態へ還ることが大切なのかもしれません。