肩トラブル

コロナ禍の影響もあり、家やオフィスにこもって、毎日長時間パソコンやスマートフォンに向かう生活を続けている人は多いと思います。

 しかし、前かがみや猫背、脚組みなどの悪い姿勢を長時間続けると、体に様々な悪影響が出ます。よくあるのは、肩こりや腰痛、足の痛みなどですが、こうした不調の原因になるのが、背骨の「S字カーブ」の崩れです。

人間の頭の重さは5~6kgもあり、その重量が常に体に加わっていますが、その衝撃を分散する仕組みが、背骨のS字カーブ。カーブを描くことで重心のバランスをとっているのです。

 しかし、パソコンやスマートフォンを使うときは前かがみになりがちなので、その状態が習慣化すると、背中側の筋肉が引っ張られ、反対にお腹側の筋肉は縮み、体の重心がずれて歪み・ひずみが発生します。そうして次第にS字カーブが崩れ、首や腰など特定の部分に負荷が偏り、痛みやしびれが生じるのです。中高年の「肩トラブル」は「姿勢の崩れ」と密接に関係

 肩が痛い、腕が上がらないなどの「肩」トラブルが特別な運動はしていないのに起きた場合、実は全身の「姿勢」と密接に関係していることが多いのです。姿勢が崩れると、背中が丸くなって肩が前に傾き、肩甲骨が本来の位置から外側へ、体の前方へとずれてしまい、スムーズに動きにくくなるため、ちょっとした動きで関節や筋を痛めてしまうのです。

 前述した通り、本来、人間の背骨はゆるやかなS字カーブを描き、骨盤はまっすぐに立っています。しかし、中高年になり全身の筋肉が落ち始め、筋力が低下すると、頭部の重みを支えきれなくなり、骨盤が後ろに傾き始めます(後傾)。それに伴って背骨(胸椎 きょうつい)は丸くなり、バランスをとるために頭が前に出てアゴを突き出すような姿勢に。そうなると、肩全体が前方へと傾き、肩甲骨も本来の位置から外側へ、前方へとずれてしまうのです。筋力のある若い人であれば、少々姿勢が崩れても、シャキッと背筋を正せばすぐにニュートラルなポジションに戻すことができますが、筋力が落ちている中高年の場合、悪い姿勢は定着しやすく、肩甲骨の位置も戻りにくくなっていきます。

すると、その状態を維持するために肩甲骨の周囲の筋肉が緊張して、肩甲骨の動きが悪くなるのです。一見、肩とは関係のなさそうな全身の「姿勢」の悪さが、肩関節の動きも妨げているのです。肩トラブル予防の第一は、胸郭の柔軟性「胸郭(きょうかく)」とは、胸全体をぐるりと取り巻くカゴ状の骨格のことで、肋骨や胸椎、胸骨からなり、その中には心臓や肺などの臓器が入っています。

中高年になると、胸郭の柔軟性は徐々に失われ、胸郭の背中の部分に張りつくように乗っている肩甲骨も、動きにくくなります。そこに、姿勢の悪化による肩甲骨の動きの低下が加わるのです。一方、加齢により、肩関節を支える筋肉や腱板は経年劣化が着々と進みます。

このように、知らず知らずのうちに肩関節のさまざまな機能が低下しているところへ、ほんの少し無理な動きが加わることで、五十肩になったり、腱板を痛めたりする人が非常に多いのです。胸郭を広げるストレッチは以下の要領で簡単にできるので、是非試してみてください。

・平らな床で、背骨に沿って円柱状の硬いクッション(エクササイズポール)の上に横たわる。厚手のバスタオルを巻くなどして代用してもよい

・頭からお尻まで、きちんとポールの上に乗せる

・重力に任せ、両腕を自然に左右に開く

・痛みがなければ腕を自由に動かしてもいいが、この姿勢で深呼吸するだけでもストレッチ効果は得られる